2020/2/21

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国際音楽祭NIPPON マルクス・グロー インタビュー「室内楽と現代作品の魅力」 Vol.1

国際音楽祭NIPPON2020、今年の室内楽プロジェクトでは「CLASSIC & MODERN」をテーマに、第一夜ではクラシックの名曲レパートリーが、第二夜では現代作品が取り上げられます。 この両公演に参加するマルクス・グローは、1995年エリザベート王妃国際コンクールピアノ部門で優勝した、ドイツのピアニスト。去る1月、ベルリン・フィルハーモニー・ピアノ四重奏団の全国ツアーのため来日していたグローに、室内楽や現代作品の魅力について伺いました。[past_image 1]グローさんは、古典的なレパートリーだけでなく現代作品にも積極的に取り組んでいらっしゃいます。現代作品に関心を持つようになったきっかけは? 大きなきっかけは、エリザベート王妃国際コンクールでの経験です。アキコも1989年にこのコンクールのヴァイオリン部門で2位に入賞していますね。 このコンクールでは、ファイナルに進むと、新曲の協奏曲を10日間ほどで準備し、演奏しなくてはなりません。私にとって新しい楽譜を読むということは、普通の人が本を読むことと同じような楽しさを感じる作業です。そのため、参加者を苦しめるとして知られているこの課題が、私にはなぜかとても楽しく、本番で演奏するのが待ち遠しかったくらいでした。 結果、コンクールに優勝することができました。しかしドイツのピアニストとして大きなコンクールに優勝し活動していると、古典的なレパートリーを弾くことを期待されます。私自身、ベートーヴェン、ブラームス、シューマンなども大好きなので、たくさん取り組んできました。でもやはり、常に同時代の優れた音楽作品との繋がりは持ち続けていたいという想いがあります。 室内楽作品では、ピアノは軸となる役割を果たすことも多いですね。良いアンサンブルを実現するため、大切にしていることはなんでしょうか。 例えばブラームスのピアノ三重奏曲のピアノ・パートの音には厚みがありますが、弦楽器の音を覆い隠すようではいけません。その際に大切になるのは、音質です。ピアノは注意深くコントロールすることで、いろいろな楽器の音、さらには歌声も模倣することができ、もちろんピアノらしい音をそのまま鳴らすこともできます。そうして、他の楽器と混ざり合う音を鳴らします。 一方で現代作品においては、曲によって、パーカッシヴな音、アグレッシブな音を鳴らす必要が出てきます。単に美しい音でだけでなく、エッジの効いた音が求められることもあります。ピアノで打楽器的な音、きれいでない音を出すことはある意味簡単ですから、それによって周りの弦楽器奏者を刺激する役割も果たします。[past_image 2]人々に現代音楽を紹介することは大切だと思いますか? そう思いますね、もちろん作品によるけれど。古典的な作品には、有名でないけれど優れているものもありますが、やはり人気の作品には、豊かな感情が込められているなどの魅力があります。 現代作品については、学ぶ価値があるのか、将来どんな存在になっていくのか、すぐにはわかりません。今回もさっそくダルヴァディの作品について調べてみましたが、初演の評価は高かったとのこと。今回、日本の聴衆のみなさんからどんな反応が得られるのか、楽しみです。 例えば私が好きな現代の室内楽作品に、シュニトケのピアノ五重奏曲があります。これは、シュニトケが亡くなった母を追悼するために書いた作品。5つの楽章すべてゆっくりで、序盤には不可解な部分もありますが、最後は高く昇っていくように完結し、自然と別の星に導いてくます。これには、母が天国で過ごしていることを願う想いが込められているといいます。 純粋なエネルギーを持つこの作品を演奏すると、最後はどこの会場でもみな感涙します。例えるなら、キューブリックの映画作品のようなものです。これは一体何を意味するのだろうと思いながら観ていくと、最後にすべての意味が理解できるのです。 川上統の組曲「甲殻」と、オーンスタインのピアノ五重奏曲の魅力はどんなところに感じますか? 川上統のいくつかの楽曲は、とてもリズミカルで、楽譜を見ると複雑なのですが、聴くと、ジャズの即興のような印象を受けるかもしれません。リズム面ではチャレンジングな作品です。 オーンスタインも、とてもおもしろい作品です。激しく、ボルテージが高い。特別な言語を持っていますが、どこかスクリャービンの後期作品や、プロコフィエフ、ショスタコーヴィチに通じるものを感じますね。 Vol.2へ続く… 取材・文:高坂はる香 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 国際音楽祭NIPPON 2020 芸術監督:諏訪内晶子 [past_image 3]特設サイトこちらから 諏訪内晶子 & ニコラ・アンゲリッシュ デュオ・リサイタル 2020年2月14日(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール 諏訪内晶子プロデュース ベートーヴェン 室内楽マラソンコンサート 2020年3月8日(日)13:00 東京オペラシティ コンサートホール ジャナンドレア・ノセダ指揮 ワシントン・ナショナル交響楽団 2020年3月10日(火)19:00 サントリーホール 諏訪内晶子 室内楽プロジェクト Akiko Plays CLASSIC with Friends ※マルクス・グロー出演公演 2020年3月11日(水)19:00 紀尾井ホール 諏訪内晶子 室内楽プロジェクト Akiko Plays MODERN with Friends ※マルクス・グロー出演公演 2020年3月13日(金)19:00 紀尾井ホール 公開マスタークラス(ヴァイオリン) 2020年3月14日(土)・15日(日) 各日11:00〜 東京音楽大学 池袋キャンパスA館内教室
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