2019/9/20

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国際音楽祭NIPPON 2020 記者会見レポート

2012年にスタートし、2020年の開催で第6回を迎える「国際音楽祭NIPPON 2020」の芸術監督、諏訪内晶子による記者会見が、9月13日、帝国ホテルで行われました。[past_image 1]冒頭に、同音楽祭の企画制作をするジャパン・アーツ代表取締役社長の二瓶純一より、挨拶がありました。 「2020年は、諏訪内晶子さんがチャイコフスキー国際コンクールに優勝し華々しくデビューしてから30年の年。また、第二次世界大戦終戦から75年という節目に、ジャナンドレア・ノセダ氏率いるワシントン・ナショナル交響楽団が登場します。さらにベートーヴェンの生誕250年でもあるということで、さまざまなトピックスが盛り込まれた内容を予定しています」 そして、諏訪内晶子芸術監督より、公演内容についての説明がありました。[past_image 2]「オーケストラ公演でご一緒するジャナンドレア・ノセダ氏とは、15年ほど前から共演しています。演目については、話し合いながら何度も案を更新していった結果、ドヴォルザークの「新世界より」、そして、昨年イスラエル・フィルと共演して手応えがあったチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲という、名曲中の名曲に落ち着きました。また、デュオで共演するニコラ・アンゲリッシュさんとは、10年ほど前にツアーや録音で共演していました。昨年、ハンブルクのアルゲリッチ・フェスティバルで共演して、お互いまた久しぶりにデュオをやってみようという気持ちになり、音楽祭への参加をお願いしました。10年前とはまた違った表現で演奏できると思います。 そして第6回からの新しい試みが、二つの室内楽コンサートです。今回は3名のプランニングアドバイザーの方々からご意見をいただきながら、一般的な曲目によるプログラムと、演奏機会の少ない現代作品によるプログラムを対比させる形で、2日間にわけて演奏します。現代作品では、ライヒ、ダルバヴィ、オーンスタイン、そして日本の作曲家から川上統(おさむ)さんの楽曲を演奏します。生誕250年のベートーヴェンについては、3月8日に室内楽マラソンコンサートを行います。日本の優れた若いアーティストにもご参加いただき、「大公」や10番のヴァイオリン・ソナタのようなポピュラーな曲に加えて、「2つのオブリガード 眼鏡付き」やピアノ三重奏曲「街の歌」なども演奏します」 さらに、第1回から継続し、第6回では諏訪内氏とスヴェトリン・ルセフ氏が講師をつとめるマスタークラスへの想いが語られます。 「第1回のときに中学生で受講した方達が、今や国内外のコンクールで優勝し、世界の音楽祭で活躍されるようになりました。このマスタークラスでは、最後に演奏会で力を発揮する形で、ご自身の伸び幅を確認する作業をしてもらっています。実際の演奏会では、数日間で本番に向けてコンディションを整えていくことが必要になりますので、それをマスタークラスの中で体験してもらいたいという考えです。私自身が小さい時に受けておきたかったマスタークラスを日本の若い世代の方に届けたいと思い、始めました」 加えて、音楽祭のプロデューサーであるジャパン・アーツ取締役の山田亮子より、今回の企画は、古典から近現代まで幅広いジャンルをレパートリーとする諏訪内さんならではの取り組みであり、日本国内でのクラシック音楽の普及も目指したものであるということ、そして東京以外の都市での開催内容について紹介がありました。 「名古屋では、徳川美術館の講堂、トヨタ産業技術記念館のエントランスロビーでミュージアムコンサートが行われます。また、東日本大震災の復興応援コンサートも前回に引き続き開催、2020年は、復興の中で新設された釜石市民ホールを会場として室内楽の演奏をお届けします」[past_image 3]会見の後半の質疑応答では、チャイコフスキーコンクール優勝から来年で30年を迎える今の心境の変化について尋ねられた諏訪内さんが、音楽祭への強い想いを語る場面もありました。 「私は、高校を卒業したばかりの10代後半、日本でしか教育を受けていないなか、チャイコフスキーコンクールで優勝して自分の周りの世界が一変するということを経験しました。もちろん受賞後に留学しましたが、日本人として日本で育つ中でこういう機会をいただき、なおかつ長く活動を続けることが出来ている。その恩返しをしたいと始めたのがこの音楽祭です。ソリストという立場は、依頼を受けて参加する活動が多く、何かのプロジェクトを立ち上げる機会があまりありません。あるときから、私はこのまま依頼された活動を続けるだけでいいのだろうかと考えるようになりました。今はこうしていろいろな協力をいただきながら、音楽祭を通じて演奏するだけではなく、より総合的な活動ができるようになり、充実感があります。これは30年前にはなかったこと。こういう企画を続けさせていただけることに、感謝しています」[past_image 4]アーティストとしてどう生きていきたいか、何を社会に届けたいかという諏訪内晶子氏の想いが語られた記者会見。その意志が反映された第6回音楽祭の全貌も見え、2020年の開催がますます楽しみになりました。 取材・文:高坂はる香(音楽ジャーナリスト)  - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 国際音楽祭NIPPON 2020 芸術監督:諏訪内晶子 [past_image 5]特設サイトこちらから 諏訪内晶子 & ニコラ・アンゲリッシュ デュオ・リサイタル 2020年2月14日(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール 諏訪内晶子プロデュース ベートーヴェン 室内楽マラソンコンサート 2020年3月8日(日)13:00 東京オペラシティ コンサートホール ジャナンドレア・ノセダ指揮 ワシントン・ナショナル交響楽団 2020年3月10日(火)19:00 サントリーホール 諏訪内晶子 室内楽プロジェクト Akiko Plays CLASSIC with Friends 2020年3月11日(水)19:00 紀尾井ホール 諏訪内晶子 室内楽プロジェクト Akiko Plays MODERN with Friends 2020年3月13日(金)19:00 紀尾井ホール 公開マスタークラス(ヴァイオリン) 2020年3月14日(土)・15日(日) 各日11:00〜 東京音楽大学 池袋キャンパスA館内教室
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