2016/6/21

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現地レポート:山田和樹指揮 バーミンガム市交響楽団 シンフォニーホールにて(2016年6月)

[past_image 1]「ヨーロッパのオーケストラには本拠地だからこそ出せるものがあるんですよ。長い歴史があって地元の観客が育てた楽団、楽団も育てられたと思っている。信頼関係ですね。このまま日本公演が始まりますので、この熱気や感動をそのまま日本に持っていけると思います。」  バーミンガムのシンフォニー・ホールで6月16日の公演後、山田和樹はステージから指揮者控室に戻る階段を駆け上がりながら満足そうにそう言った。ベートーヴェンの「エグモンド序曲」で快調にすべり出し、エルガーの「チェロ協奏曲」とシベリウスの「交響曲第2番」を演奏した。シベリウスはサイモン・ラトルを継いだ首席指揮者サカリ・オラモの故国フィンランドの音楽でもあり、楽団は熟知している。交響詩的抒情の中に民族的感情が激しく盛り上がり、高齢者の多い昼公演なのに会場は若者のような熱気に包まれた。 「本番前にベテラン楽団員が、『このシベリウスをラトルともオラモともやって録音もしたけれど、あなたの指揮もそれはすばらしい』と僕の部屋にわざわざ言いにきてくれたんです。これはうれしかった。テンションが一気に上がりましたね(笑)」  協奏曲はピーター・ウィスペルウェイが、溢れる緊張感のうねりを出しながら独奏した。「何度演奏しても‘ご馳走’です。それでいてとても私的な曲でもあります。感情や心の痛みが明瞭に現れていますが、それゆえに罠に嵌らないように。CBSOも山田氏も初めてですが、彼は最高だし楽団とは心地よく共演できました。何か新しい光を射し込みたいというチャレンジがありましたね」  前日にはチェルトナムという町で、シベリウスとラフマニノフの「ピアノ協奏曲第3番」を演奏した。独奏者の河村尚子は言う。 「初めての共演ですが、とても優秀な方々で反応が早いんです。ラフマニノフの協奏曲は音符がたくさんあるのでたいへんでしたが、ロシアの魂を包み込む音楽が身に染みてきました。ロシアの楽団なら私のやり方に『君、違うよ』というでしょうけれど(笑)、CBSOはイギリスだからニュートラルで、どんな解釈も受け入れてくれる透明さがあります」  楽曲の国と演奏者の国が違うことについて、山田がわかりやすく説明してくれた。 「お国物をやるむずかしさはあります。外国人が尺八を吹くみたいにね。でも楽団は違う角度からアプローチして新鮮さを見つけることも求めています。楽団の長い歴史の中で少しずつ様々な指揮者からもらって、そのレパートリーの引き出しを増やしていくんです」 秋島 百合子(ロンドン在住ジャーナリスト) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 世界の第一線で活躍する山田和樹、ラトル、ネルソンスが率いた名門オーケストラと待望の共演! 山田和樹指揮 バーミンガム市交響楽団 2016年06月28日(火) 19時開演 サントリーホール 公演詳細はこちらから
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