2015/10/21

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鈴木優人 ジョワ・ド・ヴィーヴル-生きる喜び[第2部]希望と愛 【連載中】

東京芸術劇場開館25周年記念コンサート ジョワ・ド・ヴィーヴル−生きる喜び 2015年11月1日に演奏する第2部「希望と愛」の作品を、ご紹介していきます! ◆【小出稚子:玉虫ノスタルジア】 ジョワドヴィーヴル 後半は第2部「希望」と第3部「愛」が合わせて一つの演奏会になっています。「希望」編は、東京芸術劇場が昨年創設した芸劇ウインド・オーケストラ・アカデミーが登場!次世代の音楽を(たぶん)奏でます。「希望」編の第1曲は、新進気鋭の作曲家 小出稚子による吹奏楽のための「玉虫ノスタルジア」。2010年に宍粟市立一宮北中学校の委嘱で作曲されました。2011年アムステルダム・コンポーザーズフェスティバルでのオランダ初演に私も指揮で参加した作品です。今回は芸劇ウインドのために新しく書き直された「バリトンサックス版」世界初演!彼女の作風として多彩な打楽器の用法とユニークな特殊奏法が挙げられます。楽器本来の奏法以外のまさに「特殊」な音色を模索する特殊奏法、さてこの曲ではどうでしょうか?こういった特殊奏法が全体の音響に可愛らしさを加え、なんとも居心地の良い空間が作り出されます。彼女がオランダ在住時に結成したアンサンブルはその名も「スケベニンゲン」(うちの近く)。ユーモアも好奇心もたっぷりな若さあふれる音楽をお楽しみください! ◆【ストラヴィンスキー:火の鳥】 11月1日(日) 東京芸術劇場のジョワドヴィーヴル は、ミニチュア的な「祈り」に始まり、終わりに向かうにつれぐいぐい巨大な作品が現れます。第2部「希望」の後半は、壮大なバレエ音楽「火の鳥」吹奏楽版です。この作品はディアギレフのバレエとして1910年に書かれました。そしてそれを元にした組曲が1911年版、1919年版、1945年版と3種類作られています。作曲者自身も細かく楽器編成を替えながら再演していました。長生きの作曲家は版が複雑ですね(笑)。今回の譜面は、1919年版組曲を元にランディ・アールズがブラスに編曲したもので、イーストマン・ウインドアンサンブルを創設したフレデリック・フェネルも携わっています。弦のハーモニクスをピッコロと口笛(!)で吹かせるなど面白い工夫も見られます。手塚治虫の漫画でも有名な火の鳥。実は世界中にたくさんの民話があります。ストラヴィンスキーの台本はカッコいいイワン王子が主人公。「火の鳥」を追い詰めたものの命だけは助けた優しいイワン、「13人の王女たち」の美しい踊りに思わず一目惚れしてしまいます。魔王カスチェイの怒りを買ったイワンを火の鳥が助けに現れます。魔王は踊らされ、眠らされ、そうこうするうちに魔力の源である魔法の卵をイワンが破壊してしまいます。囚われ王女たちも解放され、最後は水戸黄門も真っ青の大団円。まさに希望をもって幕となります。 ◆【メシアン:トゥーランガリーラ】 11/1ジョワドヴィーヴルを象徴する作品であり、世界遺産として受け継がれていくべき作品がこの10楽章の交響曲です。1946年メシアン38歳の時に書かれ、東京芸術劇場が生まれた1990年に改訂出版されました。編成は、木管楽器3本ずつ、ホルンは4本、トランペット5本、トロンボーン3本とチューバ、打楽器は13種8人、さらに鍵盤つきグロッケンシュピール、チェレスタ、ヴィヴラフォン、そしてピアノのソロ、オンドマルトノのソロが入るという非常に巨大なものです。題名はサンスクリット語の「トゥーランガ=時、リズム」と「リーラ=愛」からなり「愛の歌」を意味します。初演はボストン交響楽団、指揮はバーンスタイン、ピアノはメシアンの妻イヴォンヌ・ロリオ、オンドマルトノは開発者の妹であるジネット・マルトノでした。さてそれでは各楽章を簡潔に見ていきましょう。この10楽章は「一つの完全な」存在であり「中断なく演奏すること」と作曲家自身が書いています。どうしても指揮者が休憩を置きたい場合は「第5楽章の後で」と指示がありますが、ちょっと嫌々書いている感じです。 1. 序章 印象的な弦のユニゾンによって「愛の歌」は始まります。この冒頭が好きすぎた中学時代の私は、自作の着メロを愛用していました(余談)。程なく聴こえるトロンボーンの第一循環主題とクラリネットの第二主題は全曲を通して聴き手の拠り所になります。 2. 愛の歌1 「愛の歌」という楽章は2つあり、こちらはフランス語の題名です。一つ目のこちらは一貫して爆発的なエネルギーが支配。かと思うと突如官能的な弦楽器とオンドマルトノが背筋をスーッと撫でてくるのでたまりません。最後は一気に駆け下りてドン! 3. トゥーランガリーラ1 タイトルと同じ名前の楽章が3つあり、どれも室内楽的で親密な音楽になっています。クラリネットとオンドマルトノの対話に続いて、ピアノやチェレスタなどたくさんの鍵盤楽器が一斉に音を奏でるエキゾチックな音響は最高です。 4. 愛の歌2 ユーモラスな冒頭のピッコロとバスーンのユニゾンといい、のちのトゥッティで波のように押し寄せる圧倒的なクライマックスといい、優れたオルガニストでもあったメシアンの色彩あふれる楽器法が素晴らしい楽章です。循環主題が順に聞こえてきます。 5. 星たちの血の喜び まさに「歓喜」に満ちた楽章。16分の3拍子、変ニ長調で書かれています。そう!この交響曲は、無調と調性のバランスが素晴らしいのですね。とてもリズミカルで思わず踊り出しそうな楽章です。最後は高らかな第一主題とともに前半終了。 6. 愛の眠りの庭 対照的にまどろみに満ちた第3循環主題で始まり、鳥の鳴き声をピアノが奏でます。全編優しさに満ちた曲です。メシアンが生涯かけて取り組んだ「鳥のカタログ」児玉桃さんも度々演奏されています。軽井沢で採譜するメシアンの写真は有名ですね 7. トゥーランガリーラ2 目が覚めたようなピアノソロで始まります。この楽章は何と言ってもリズムの緻密な掛け合いが見どころで、打楽器パートには大きな見せ場があります。特に木魚と大太鼓の「リズムのカノン」をきちんと聴くよう注意書きがあります。 8. 愛の発展 タイトルの「Developpement」には「展開部」という意味もあり、文字通り各主題が展開され、発展してゆく重要かつ長大な楽章です。曲がいよいよ核心部に差し掛かっているのです。第4主題が全オーケストラで奏でられて現れます。 9. トゥーランガリーラ3 フィナーレの前は再び緻密な室内楽を聴かせる楽章です。打楽器の掛け合いが再び現れますが、ここでメシアンは、1から17までの十六分音符による音価がスコアの一つ一つの音符に付けて、いわば作曲プロセスを奏者と共有しています。 10. フィナーレ 最終楽章では第5楽章の歓喜のリズムが再び現れ、このベースの上で全ての循環主題が現れます。まさに宇宙と繋がる瞬間と言っても良いでしょう。最後は「とても長く」と指示された嬰ヘ長調の和音が永遠の愛を示して終曲となります。
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