2015/11/26
東京公演初日11/26「ジュエルズ」公演レポート
文京シビックホールでの『ジュエルズ』で幕を開けたマリインスキー・バレエ東京公演。バランシンが3つの宝石をモフィーフに振付けた豪華絢爛な三部作バレエは、観客を大いに湧かせ、熱狂の渦に巻き込んだ。 フォーレの繊細な音楽に合わせて「エメラルド」を踊ったダンサーの中でも、とりわけ目を惹いたのがヴィクトリア・ブリリョーワ。ハープとフルートの愁いを帯びたメロディが有名な「シシリエンヌ」とともに、抒情的で感情豊かなバランシンを見せてくれた。
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—「エメラルド」の衣装はとても素敵ですが、着ていてどんな気分ですか?
「本当に特別な気分です。本当に美しい衣装ですから…でも、踊るのには便利ではないんですよ。胴体の部分に骨が入っていて、実はとても硬いんです」
—ブリリョーワさんが踊る「シシリエンヌ」はとても表情豊かで、心から音楽に共感しているように見えました。これは新鮮な驚きだったんですよ。バランシンはもっとクールなイメージがあったので…。
「音楽がすべての感情の源だと思います。音楽に刺激されて色々な感情が湧いてくるし、それに乗りながら自分だけのストーリーを描き始めるんです」
—では、あの素晴らしい演技は先生の指導ではなく、ブリリョーワさんのオリジナルな解釈だったのですね。
「そうです。『エメラルド』は出演者が多くて、それぞれの幻想でバレエを作っているのです。それがお客さんに伝わるかどうかは、また別のストーリーですが…」
—とても感動しました!
「私のストーリーが伝わったわけですね(嬉しそうに)。それがこのバレエの目的ですから、成功して嬉しいです。『白鳥の湖』では大きな白鳥を踊り、『愛の伝説』ではやはり幻想シーンのコールドに出演するので、ソリストとしての舞台は今日が最後になります。ですから、ちょっとしたお祝いをしなければならないと思っているんですよ(笑)」
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<ポーズをお願いしたら快くしてくれました!>
『ジュエルズ』の中でもモダンでアブストラクトで、ダンサーに最大限のテクニックを求める「ルビー」。ストラヴィンスキーの『ピアノとオーケストラのためのカプリッチョ』の複雑なリズムに合わせて、四人の男性ダンサーを従えるような妖艶なソロを見せたエカテリーナ・コンダウーロワには、格別な喝采が巻き起こった。怪我のために休養していたコンダウーロワの、日本での本格的な復帰公演となった。
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<ピースをして可愛らしいコンダウーロワでした!>
—今夜の「ルビー」を観て、コンダウーロワさんが完全に復帰したことを実感しました。
「日本に来ることが出来たのはとても幸運です。怪我の治療をしているときは、日本に行けないのではないかと思っていました。でも、絶対行きたい…必ず回復できる! と自分に約束して、心で念じていました。私なしでは日本公演はありえない、と(笑)」
—本当にです。今夜は素晴らしい笑顔で踊られていました。 それにしてもストラヴィンスキーの前衛的な音楽に合わせて完璧に踊るのは、大変ではないですか?
「このバレエは音楽と振付が完全に一体化しているので、複雑に見えるステップもひとつひとつが音楽を具体的に表現しているのです。だから、振付を覚えてしまえばそれほど難しいわけではないんですよ」
—とても楽しそうに見えました。
「楽しいです! 怪我をして、バレエなしの人生がいかに自分にとって不完全であるかを知ったのです。それから、本当に一秒一秒を楽しんで踊るようになりました」
—この夏にコンダウーロワさんにお会いしたとき、怪我で休んでいたときにお母様を亡くされたお話を聞き、とても心配していました。すべては回復しているのですね。
「人生の複雑な局面を乗り越えた結果、人は強くなるのではないでしょうか。すべての踊り、すべての公演が新しく感じられます。今は母のために踊っているようなところもあるんです。母は私を心から支えてくれて、母なしでは今の私のキャリアはありえませんから」
—きっと喜んでらっしゃると思います。東京都名古屋では『白鳥の湖』のオデット/オディールを踊られますね。
「日本のお客様はクラシック・バレエをとても愛してくださっているので、私だけでなくとにかくマリインスキー・バレエを観にきていただきたいのです。ロシア国外で上演されることが難しい『愛の伝説』も、今回カンパニーはやりますからね。このツアーでは、自分が出演する公演だけでなく、すべてを楽しみにしています」
膨大なレパートリーをもつマリインスキー劇場で、2007年から指揮者を務めているアレクセイ・レプニコフ。今回の来日ツアーでは全公演の指揮を一人でこなす。サンクトペテルブルグ音楽院でトロンボーンを学び、マリインスキー劇場オーケストラではトロンボーン奏者としてキャリアをスタートさせた。カーテンコールのときの、少し照れたような笑顔が印象的だった。
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「(インタビューを求めると)まずは、日本の観客の皆さんに再びお会いできるのが、どれだけ光栄なことかをお伝えしたいと思います。日本はマリインスキーにとって第二の家のような場所なんです。とても入念に準備をしていますよ。日本の温かいお客様は、我々の芸術を深く理解してくださる。責任も大きいけれど、得るものも大きいです」
—嬉しいです!『ジュエルズ』ではフォーレ、ストラヴィンスキー、チャイコフスキーの、キャラクターの異なる曲を素晴らしく指揮されていました。バレエの演技をさらにドラマティックに高めるオーケストラだという印象です。
「そうですね。ダンサーによって指揮が変わってくるところがあります。これは私にとっては難しいことでもあるんです。踊りにくい音楽と踊りやすい音楽があるとしたら、当然踊りやすい音楽がよいのですが、それによってオリジナルの音楽の性格が変えられてしまうのはよくない。バランスをとることが必要なのです」
—なるほど。昨日のゲネプロではとても短い(爪楊枝のような)指揮棒を使われていましたが、ゲルギエフさんと同じものを使われているのでしょうか?
「あのくらいの長さの指揮棒がちょうどいいのです。マエストロ・ゲルギエフはもっと短いのを使われていると思いますよ(笑)。マエストロは柔らかい手の持ち主なので、もっともっと短くても大丈夫なのです」
—てっきり、マリインスキー劇場の秘伝の指揮棒なのかと思っていました!
「いえ、秘伝ではないのです(笑)」
—このツアーでもたくさんの公演で指揮をされますが、サンクトペテルブルグの象徴ともいえる今夜のチャイコフスキー(「ダイヤモンド」)は格別でした。
「ありがとうございます。繰り返しになりますが、バレエの指揮はステージをサポートするものでありながら、音楽そのものを壊さないことが重要です。両方を揃えるということが難しく、その分、劇的効果と音楽的効果が合致した瞬間は、とても素晴らしいものになります。オーケストラにとっても幸福な瞬間ですね」
「ダイヤモンド」を踊ったクリスティーナ・シャプランとティムール・アスケロフコメントは、このひ写真のみの登場。コメントを取る時間がありませんでしたが、後日お話しを伺う予定です。
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<ジュエルズの幕が無くなると、壁には松の絵が!>
明日からは東京文化会館に場所を移し「愛の伝説」からスタートいたします!
「愛の伝説」の上演は非常に稀ですので、この機会をお見逃しなく。
取材:小田島 久恵 (音楽ライター)
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東京公演開幕!!
世界のバレエの至宝。ロシア芸術の都サンクトペテルブルグの高貴な華
マリインスキー・バレエ<キーロフ・バレエ>2015年来日公演
⇒ 詳細はこちらから
「愛の伝説」
11月27日(金) 18:30 東京文化会館
11月28日(土) 13:00 東京文化会館
「ロミオとジュリエット」
11月30日(月) 18:30 東京文化会館
12月1日(火) 18:30 東京文化会館
12月2日(水) 13:00 東京文化会館(平日マチネ公演)
「白鳥の湖」
12月4日(金) 18:30 東京文化会館
12月5日(土) 12:30 東京文化会館
12月5日(土) 18:30 東京文化会館
12月6日(日) 13:00 東京文化会館