2015/8/5

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インタビュー:ヴィクトリア・テリョーシキナ[マリインスキー・バレエ]

[past_image 1] Q:「愛の伝説」で踊るメフメネ・バヌーという役をどのようにとらえていますか? ヴィクトリア・テリョーシキナ(以下、VT):とても可哀想な女性ですよね。女性の悲劇を背負って生きているのですから。人間は「愛」が何であるかを知らないうちは、人生には「愛」以外の他の価値があると思っているでしょう。しかし「愛」が一番大切だと知った瞬間に、彼女は持っているもの全てを失ってしまったことに気がつくのですから。美しかった以前であれば、フェルハドは彼女のことを愛したかもしれません。でも美貌を「愛」を争うことになる妹のために失ってしまうのですから。それから先生が教えてくださったことなのですが、「この役の難しいところは悲劇のすべてを伝えるのに、顔の表情を使えず、目と身体の動きで表現することしかできないことです。だってステージに出ているほとんどの時、顔はマスクで隠していますから。」 Q:目でも表現するのですね。 VT:そうです。目の表現はとても重要です。普段の生活でも誰かと話す時は、お互いの目を見ますよね。 Q:マリインスキー・バレエの『愛の伝説』が初めて海外で上演されることになり、それが日本で行われることをとても嬉しく思っています。 VT:私もとても嬉しいです。『愛の伝説』がやっとサンクトペテルブルグから外国に出ること、しかも私の大好きな日本へ行くことをとても幸せに思います。これは本当に素晴らしいバレエです。と同時に、3人の主役それぞれにとって難しいバレエです。踊りがとても多いですし、身体的な強さが踊るための前提条件として必要です。さらに全員がはっきりとした個性を持っていますので、それを演じきることが求められるのです。本当にすべてにおいて素晴しいバレエだと思います。 [past_image 2] Q:役そのものになりきるのでしょうか? VT:メフメネ・バヌーはとても強く威圧的で、時に残酷でさえある人物です。実生活の私はまったく違う性格ですが(笑)、なぜかこのようなタイプの女性の心情は理解しやすいですね。 Q:日本公演では「ロミオとジュリエット」も踊っていただきますが、初めてのジュリエットを踊ったときのことを覚えていますか? VT:もちろん覚えています。5年くらい前だったでしょうか、ファテーエフさんが私のところに来て「ヴィーカ、『ロミオとジュリエット』を踊りたくないかい?」とおっしゃったのです。私はとても驚いてしまいました。それまで私のレパートリーには抒情的でロマンティックなヒロインの役はありませんでしたから。私はいつも『ドン・キホーテ』のようなタイプのものを踊っていました。あんまり驚いて「ファテーエフさん、私にできるか判らないわ、少し考えさせてください」と言ってしまったんです。ところが彼は私の答えを待つまでもなく私をキャスティングしてしまったので、私は不安ながら稽古をスタートしました。でも作品の準備に取りかかった時から、私はこの作品に夢中になってしまったのです! Q:演技に目覚めた・・・ということでしょうか。 VT:おそらくそうでしょうね。ジュリエットという役は、とても難しいテクニックが必要とされる、というよりは、ドラマ、悲劇、愛のすべてが込められた人生を生き抜かなければならないところにあります。最初のリハーサルは戸惑いながらでしたので、少し大変だったのですが、後になって何かの瞬間に自分の中に変化が起きるのを感じました。こんなに感情を出すのが恥ずかしい、という気持ちがなくなっていったのです。コンプレックスが消えていったのかもしれませんね。とても気持ちが楽になって恥ずかしさも消えて、この時に私は本当に…ジュリエット自身になれた、というのでしょうか。その時から、この作品は踊っている時に泣けてしまう作品です。無理に涙を絞り出して、ということではなく、自然に涙があふれてきてしまうのです。 その時の状況や、自分の中での何かの調子にも大きく左右されますけれども。オーケストラがとても美しく響いているせいか、ただその時私が敏感だったのか、胸が張り裂けそうな気持ちになることがあります。 Q:毎回毎回が違う舞台なのですね。 VT:そうです。それに私は毎回の舞台で何か新しいことをするのが好きです。衣装のディテールに凝ったり、髪飾りなどにこだわってしまったりすることもあります。もちろん感情表現は毎回違います。 Q:改良を続けている・・・ということでしょうか。 VT:そうできていると良いのですが、舞台は私ひとりだけで作っているわけではありませんから、他の役も重要ですよね。例えば『ロミオとジュリエット』にはティボルトや父、母の役があり、これもとても重要です。ジュリエットの父親役をウラジーミル・ポノマリョフが演じている時は絶対にうまくいくという確信が持てます。私は彼のことを信頼していますし、すべてのバレエにおいて彼は天才的な演技を見せてくれます。このようなプロフェッショナルな人々と同じ舞台に立てる時は幸せです。古典作品のコール・ド・バレエについても同じことが言えます。例えば『白鳥の湖』で白鳥たちがシンクロして、ぴたりと揃って踊っている時は素晴しい印象を与えるはずです。そういう点で、マリインスキー・バレエの舞台は満足していただけることが多いと確信しています。 [past_image 3] Q:ところでお子さんが生まれたのですよね。お子さんにもバレエを習わせたいと思っていますか? VT:はい。娘のミラダがバレエを習いたいと言ったら、ダメという理由はありません。女の子がバレエを習うことに、悪いことはないのではないでしょうか。私は自分の意思に反してバレエを習わされたのですが、今ではそのことを両親に感謝しています。ただし、バレエでプロフェッショナルになることはとても大変なことですから、自分の子どもには絶対にやらせたくない、ケガ、背中の痛みを体験させたくない、と思う人もいるかもしれませんね。私も子供の頃は辛かったですから。毎晩、居残りして追加のレッスンばかり。みんな家に帰っているのに、私はレッスン場で2,3時間練習して・・・というのは大変でした。 Q:最初は新体操をしていたのですよね?柔軟性は初めからあったのですね。 VT:はい。4歳から10歳まで、私は新体操をしていました。ですからバレエに移った時はほぼ身体が出来上がっている状態でした。でも母が言うには、私は最初、身体的にはバレエにまったく向いていなかったそうなのです。母は、私がスプリッツ(前後開脚)しているのをみたのですが、全然開かずに三角のまま脚が止まった状態だったそうです。「これじゃだめね、きっとパパに似たのだわ」と母は言っていました。父もスポーツマンでしたが柔軟性がなかったからです。けれどその後、ストレッチが出来るように文字通り1年で仕込まれました(笑)。もちろんとても痛かったです!今でも覚えていますが、母が幼稚園に私を迎えに来て、さあレッスンに行きましょうと言った時、昼寝の後の私は眠たい声で行きたくない、遊びたいのよ、とよく訴えていました。でも私は引きずられて行ったわけです。行ってしまうと私はとても聞き分けの良い子だったので、練習では100%の努力をしたのですが、、。 Q:バレエに転向したのはご両親の希望だったのですか? VT:はい。私は新体操で1位をとるなど良い成績を収めていました。そして「さあ、次に行かなければ」と両親が言ったのは突然のことでした。 Q:最初はバレエが嫌だったのでしょうか? VT:はい(笑)。信じられないでしょう? Q:それがいつの間に・・・ VT:バレエ学校に入学してからです。その時の入学者には、私と一緒に新体操をしていた女の子たちがたくさんいました。その後『くるみ割り人形』を上演する時に、パ・ドゥ・トロワの役に選ばれたのです。もうそうなると舞台と美しいチュチュの世界に私は夢中になってしまったのです! Q:ところで、ダンサーとしての喜びはどのような時に感じますか? VT:もちろん最後の拍手です。それから、一緒にリハーサルを積み重ねてきたクナコワ先生が「素晴らしかったわ。気に入ったわよ。良く頑張ったわね」と言ってくださると、私はああ良かった、と安心します。舞台に力を注いだのは私だけでなく、クナコワ先生も同じですからね。入団した時から私を指導してくださっている先生は、とても責任感があり、感情豊かな人です。教師たちは自分たち自身のことよりも教え子のことに心を砕いてくださっていますから。 ありがとうございました。 〜サマーキャンペーン実施中〜  [対象公演]  □11月28日(土)13:00 「愛の伝説」  □12月1日(火)18:30 「ロミオとジュリエット」  □12月2日(水)13:00 「ロミオとジュリエット」  □12月4日(金)18:30 「白鳥の湖」 テリョーシキナが出演する11月28日の「愛の伝説」、12月1日の「ロミオとジュリエット」も対象日となっております。 期間限定!この機会をお見逃しなく。 詳細:http://www.japanarts.co.jp/s_campaign2015/index.html ------------------------------------------------------- 世界のバレエの至宝。ロシア芸術の都サンクトペテルブルグの高貴な華 マリインスキー・バレエ<キーロフ・バレエ>2015年来日公演 詳細はこちらから 「ジュエルズ」  11月26日(木) 18:30 文京シビックホール大ホール 「愛の伝説」  11月27日(金) 18:30 東京文化会館  11月28日(土) 13:00 東京文化会館 「ロミオとジュリエット」  11月30日(月) 18:30 東京文化会館  12月1日(火) 18:30 東京文化会館  12月2日(水) 13:00 東京文化会館(平日マチネ公演) 「白鳥の湖」  12月4日(金) 18:30 東京文化会館  12月5日(土) 12:30 東京文化会館  12月5日(土) 18:30 東京文化会館  12月6日(日) 13:00 東京文化会館
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