2015/7/21
ハンヌ・リントゥに聞く (フィンランド放送交響楽団)
『シベリウスの楽譜は、まるでダイアモンドの様。
角度や光によって、新しい発見がある』
−フィンランド放送交響楽団首席指揮者 ハンヌ・リントゥ
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マエストロにとってシベリウスとは、どのような作曲家でしょうか?
フィンランド人にとって、シベリウスはいつも身近な存在です。どの小学校もシベリウスの肖像画を壁に飾り、人々は『英雄』と呼んでいます。
私が初めてシベリウスを演奏したのは12歳の時です。オーケストラのチェロ奏者として交響曲第2番を演奏し、作品の素晴らしさに感激し「人として、シベリウスの曲をもっと極めなければ!」と思いました。
フィンランド人の指揮者として、シベリウスを中心に勉強し、いつも彼の曲に囲まれ、コンサートでは必ずと言ってよいほど演奏する。「あぁ、まただな」と、思うときもありますよ。でも、シベリウスの楽譜は、まるでダイアモンドの様です。角度や光によって新しい輝きが見える様に、スコアを通して常に新しい発見があります。指揮者として技術的・音楽的にも、挑戦に終わりはないのだ、と教えてくれる作曲家です。
今秋、マエストロはフィンランド放送交響楽団(FRSO)・新日フィルとシベリウス交響曲全曲演奏を、FRSO&諏訪内晶子さんとヴァイオリン協奏曲を演奏されます。
マエストロは、シベリウスの『音楽』をどのように捉えていますか?
シベリウスの音楽は、美しくロマン派的です。聴いていると静かな気持ちにさせてくれると同時に、気品があり、物事を気高くさせる力があります。
シベリウスは、若い頃にウィーンで学び影響を受け、その後静かで美しい音楽を作るようになりました。曲を創るときに、この世のものではない(神様ではない)ものからインスピレーションを得ていたのではないかと考えます。シベリウスは都会人でしたが、音楽の中に、神話に描かれる自然を表現し、自然と人々の内面との繋がりを繊細に描いていると思います。
最初にシベリウスのスコアを見たとき、作曲そのものが難しかったのではないか、と思いましたが、研究すればするほど理解が深まります。交響曲の第8番は未完成で、シベリウスは後半30年間、大きな曲を書いていません。国民的英雄だった本人にとって、大曲を成し遂げた後、次の作品への期待があまりに大きかったからではないでしょうか。
日本の人々とシベリウスの音楽の結びつきの強さも、来日ごとに感じます。子供のころ住んでいた小さな町の図書館で、渡邊暁雄氏指揮の交響曲第2番のレコードを見つけました。渡邊氏の解釈は、大変素晴らしいと思いました。
フィンランド放送交響楽団(FRSO)の首席指揮者として2シーズン目を迎えられます。FRSOにはどのような特徴がありますか?進めている取組みがありましたら教えて頂けますか?
フィンランド放送交響楽団は、典型的な放送オーケストラだと思います。複雑な現代音楽を取上げても、習得が早いですね。もちろん、シベリウスはどの演奏ツアーでもプログラムに入れていますよ! 古典音楽も頻繁に演奏し、とてもフレキシブルな性格の楽団です。
就任初シーズンでは、まずバッハ、ベートーヴェン、ブラームスといった古典派的プログラムを中心に、オーケストラの特徴を知りました。団員は、歴代の優れた5人の指揮者とシベリウスを演奏しており、音楽を大変深く理解しています。
フィンランド放送響は、4年前に建てられた専用ホールをベースに活動しています。永田音響の豊田氏による音響設計は、本当に美しいアコースティックを生み出してくれる。心に思うままの演奏ができるのです!オープン前の音響チェックのときに、私も居合わることができましたが、オーケストラ・メンバーの殆どが涙を流して喜んでいました。
今年はシベリウス生誕150周年。フィンランド放送響と私は、シベリウスの交響曲全曲録音を進めています。シベリウスゆかりの場所を尋ねて思いを馳せる7つのドキュメンタリーが放送される予定です。私も脚本に関っていますが、記念に残るものにしたいです。
フィンランドが独立して100年となる2017年には、音楽史的なプログラムを計画中です。フィンランドの現代作曲家マグヌス・リンドベルイやセバスチャン・ファーゲルルンドの作品も取上げる予定です。
フィンランド放送響と、シベリウス生誕150年記念の年に、日本の皆さんに、美しい音楽を通してシベリウスの魅力を伝えたいと今から楽しみにしています。
ありがとうございました。
写真ではやや強面に見えるマエストロは、とても快く取材に応じてくれました。プライベートでは、ロシアから引き取った犬を飼っており、時々練習場に連れてくるそうです。
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シベリウス生誕150周年記念
母国の名門オーケストラで聴く、ザ・ベスト・オブ・シベリウス!!
ハンヌ・リントゥ指揮 フィンランド放送交響楽団
2015年11月04日(水) 19時開演 サントリーホール
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